島に生きる野生の知恵 リュウキュウイノシシの生態進化

リュウキュウイノシシ(りゅうきゅういのしし)

りゅうきゅういのしし

リュウキュウイノシシとは?

リュウキュウイノシシは、沖縄や奄美諸島に生息する日本固有のイノシシの亜種で、島嶼環境に適応した独自の進化を遂げた野生動物です。
小柄な体格と高い学習能力を持ち地域の自然や文化と深く結びついています。

リュウキュウイノシシ(りゅうきゅういのしし)

リュウキュウイノシシ

基本情報と分類

リュウキュウイノシシ(学名:Sus scrofa riukiuanus)は、イノシシ科に属する哺乳類で、ニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)の亜種とされています。
1924年に黒田長礼によって記載され南西諸島に分布する固有亜種として知られています。

リュウキュウイノシシ(りゅうきゅういのしし)

リュウキュウイノシシ

生息地と分布

このイノシシは、奄美大島・徳之島・沖縄本島・石垣島・西表島などの島々に生息しています。
主に森林地帯を好みますが、食料が不足すると人里や農地にも出没することがあります。
島ごとに遺伝的・形態的な違いがあり、特に西表島や石垣島の個体群は、他地域のものと異なる特徴を持ち、独立した亜種とする提案もあります。

リュウキュウイノシシ(りゅうきゅういのしし)

りゅうきゅういのしし

生態と行動

リュウキュウイノシシは夜行性で、昼間は藪の中で休みます。
雑食性で、植物の根や果実、昆虫、小動物などを食べます。

単独行動が基本ですが、繁殖期にはペアや親子で行動することもあります。
嗅覚や聴覚が非常に鋭く、罠を避けるなどの高い学習能力を持つことが知られています。

人との関わり

沖縄や奄美では、リュウキュウイノシシは文化的・食材的価値を持つ存在です。
一方で、農作物への被害もあり害獣としての側面もあります。
かつては畑を守るために「猪垣(ししがき)」と呼ばれる囲いが作られていた地域もあります。

食材としての魅力

リュウキュウイノシシの肉は、脂肪が少なく野性味があり、ジビエ料理として人気です。
特にバレニンという疲労回復成分が多く含まれており、アスリート向けの食材としても注目されています。
煮込み、燻製、焼き物など、さまざまな調理法で楽しめます。

保護と課題

環境省のレッドリストでは、徳之島の個体群が「 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」に指定されており、沖縄県では「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」とされています。
自然との共生を目指すためには、適切な管理と保護活動が重要です。

リュウキュウイノシシ(りゅうきゅういのしし)

りゅうきゅういのしし

リュウキュウイノシシ(りゅうきゅういのしし)

リュウキュウイノシシが逃げた

リュウキュウイノシシ(りゅうきゅういのしし)

リュウキュウイノシシのジャンプ

ロードキル被害

ロードキルとは、車両にひかれて死ぬ轢死れきし、ぶつかって死ぬ衝突死、道路わきの排水溝内へ落ち込み溺れて死ぬ溺死、乾燥して死んでしまう乾涸死かんこしなどの、道路による影響で野生動物が死亡することをいいます。
やんばるでは、ヤンバルクイナ、ケナガネズミ、リュウキュウヤマガメ、リュウキュウイノシシ、イボイモリ、シリケンイモリなど様々ないきものがロードキルにあっています。

天然記念物(てんねんきねんぶつ)とは?

「文化財保護法」では,「動物,植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもの」のうち、重要なものとされています。
天然記念物は、日本列島の成り立ちを示す地質現象や、過去の生物の姿を知ることのできる化石、日本列島の生物地理学的な特性を示す固有種等の動植物などで、日本列島がたどってきた「自然史」としての意義を持っています。

さらに、人がかかわり、作り上げた自然、すなわち巨樹、ホタルなど日本人の自然観の形成に寄与したものや、並木、家畜・家禽など、人がかかわって作り上げたものなどで、私たちと自然との親密さを物語る「文化史」としての意義も持っています。
天然記念物を守ることは、地域の自然とそれにまつわる文化を守ることであり、天然記念物の価値を明らかにして生かすことで、人々の自然観や地域とのつながりを育むことができます。
天然記念物は、貴重な大自然を記念するもので獣や鳥、昆虫などの「動物」、樹木や草花などの「植物」、断層や化石などの「地質・鉱物」、そして、それらに富む天然保護区域を指します。

レッドリスト(絶滅危機)のカテゴリー

※1.(EX) 絶滅:我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
※2.(EW) 野生絶滅:飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ 存続している種
※3.(CR+EN) 絶滅危惧I類:絶滅の危機に瀕している種
※4.(CR) 絶滅危惧IA類:ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
※5.(EN) 絶滅危惧IB類:IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
※6.(VU) 絶滅危惧II類:絶滅の危険が増大している種
※7.(NT) 準絶滅危惧:現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
※8.(DD) 情報不足:評価するだけの情報が不足している種
※9.(LP) 絶滅のおそれのある地域個体群:地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの

和名 リュウキュウイノシシ
(りゅうきゅういのしし)
(琉球猪)
(学名:Sus scrofa riukiuanus)
体長 約100〜120cm
体重 30〜50kg(ニホンイノシシより小柄)
体色 黒褐色で短毛
体型 鼻先や足が短く、丸みを帯びた体型
短く全体的にコンパクトな印象
この小型化は、限られた資源と空間の中で
生きる島嶼動物に見られる典型的な進化の一例で、
ベルクマンの法則にも合致します。

国頭村(くにがみそん)のおすすめスポット


大宜味(おおぎみ)のおすすめスポット


天然記念物のおすすめ

コメントを残す


error: