嘉陽層の褶曲 地層
沖縄本島北部、名護市嘉陽地区に位置する「嘉陽層の褶曲」は、約4000万年前の地層が地殻変動によって大きく波打つように変形した、全国的にも珍しい地質構造です。この地層は、深海底に堆積した砂岩と泥岩の互層から成り、プレートの沈み込みによる強い圧力で折りたたまれた「褶曲（しゅうきょく）」が見事に残されています。
嘉陽層の褶曲 海
嘉陽層の褶曲の透き通った海
嘉陽層の褶曲の海
嘉陽層の褶曲 地層
嘉陽層は、新生代始新世（約5000万〜4000万年前）に、海洋プレートの沈み込み帯で形成された「付加体」と呼ばれる地質構造の一部です。付加体とは、海底に堆積した堆積物がプレートの動きによって陸側に押し付けられ、地層として取り込まれたものです。嘉陽層では、砂岩と泥岩が交互に積み重なった「タービダイト層」が広く分布しており、これが褶曲によって波状に変形しています。
嘉陽層の褶曲 地層
特に名護市底仁屋の旧国道沿いの崖面では、地層が横倒しになるほど強く折りたたまれた「横臥褶曲（おうがしゅうきょく）」が観察でき、これは日本国内でも非常に珍しい現象です。褶曲の波長や形状は、地層の厚さや岩石の性質によって異なり、地質学的な研究対象としても価値が高いものです。
また、嘉陽層には堆積時の構造や深海底に生息していた生物の痕跡（生痕化石）も多く残されています。代表的なものには、蜂の巣状の模様を持つ「Paleodictyon」や、規則的な蛇行模様の「Helminthoida」、同心円状の「Spirorhaphe」などがあり、これらは水深2000メートル以上の深海環境で形成されたことを示しています。これらの化石は、当時の海洋環境や生態系を知る手がかりとしても重要です。
嘉陽層の褶曲 見える小浜の川神
嘉陽層の褶曲は、地質学的な価値だけでなく、教育的・文化的な価値も高く、2012年には国の天然記念物に指定されました。現地には案内板や解説碑が整備されており、訪れる人々に地球のダイナミズムを伝える貴重なフィールドとなっています。地元の学校や大学の地学実習にも利用されており、自然と科学を学ぶ場として親しまれています。
このように、嘉陽層の褶曲は、自然の力が生み出した壮大な地質の芸術であり、沖縄の自然遺産として後世に伝えるべき貴重な文化財です。訪れる人々に、地球の歴史とその変動のスケールの大きさを実感させてくれる場所です。
嘉陽層の褶曲 地層
嘉陽層の褶曲の主な見どころ
横臥褶曲（おうがしゅうきょく）
地層がほぼ水平に折りたたまれている、全国的にも珍しい褶曲構造。旧国道沿いの崖面で観察でき、地殻変動の力強さを実感できます。
砂岩と泥岩の互層（タービダイト）
深海底で堆積した砂岩と泥岩が交互に重なった地層。褶曲によって波状に変形しており、地層の力学的性質が視覚的に理解できます。
生痕化石（せいこんかせき）
深海底に生息していた生物の痕跡が岩石表面に残されています。代表的なものに「Paleodictyon」や「Helminthoida」などがあり、当時の海洋環境を物語ります。
断層と破砕帯
褶曲に加えて、逆断層や地層の破砕が見られる箇所もあり、地層がどのように変形してきたかを学ぶことができます。
地層の厚さによる褶曲の違い
厚い砂岩層ほど褶曲の波長が大きくなる傾向があり、地層の性質と変形の関係を観察する絶好のフィールドです。
案内板と解説碑
現地には褶曲の成り立ちや地質学的背景を説明する案内板が設置されており、初めて訪れる方でも理解しやすくなっています。
注意事項
日陰が少ないため、熱中症対策を万全に
特に夏季は直射日光が強く、周囲に木陰や休憩所が少ないため、帽子・日傘の持参、水分補給、こまめな休憩を心がけてください。
岩場は一部崩れやすい箇所があります
地層の一部は風化が進んでおり、足元が不安定な場所もあります。滑りにくい靴を着用し、岩に登ったり、無理な接近は避けてください。
安全な観察のために案内板や指定ルートを守りましょう
現地には地質の解説や安全情報を記した案内板があります。自然を守りながら、安全に楽しむためにも、ルート外への立ち入りはご遠慮ください。
駐車場あり(広々とした海岸に止めれます)
| 観光名所 | 嘉陽層の褶曲（国指定天然記念物） かようそうのしゅうきょく（くにしていてんねんきねんぶつ） |
|---|---|
| 住所 | 〒905-2261 沖縄県名護市天仁屋 |
| 営業時間 | 見学自由 |
