海へ直通。福地ダムが隠し持つ“上流の脱出口”

福地ダム上流洪水吐 (ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

福地ダム上流洪水吐(ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

― ダム本体とは別に存在する、日本でも極めて珍しい洪水吐 ―

福地ダムの上流洪水吐は、日本のダムの中でも極めて珍しい構造を持つ設備である。最大の特徴は、ダム本体から約6kmも離れたダム湖の最上流部に設置されている点だ。通常、洪水吐はダム本体に隣接して設けられるが、福地ダムでは上流側に独立して配置されており、洪水時にはダム湖の水を直接太平洋へ放流する仕組みになっている。

この位置に洪水吐が設けられた理由は、福地ダム上流部の特殊な地形にある。ダム湖の最上流部は急峻な地形で、すぐ横が太平洋に面している。そのため、余剰水を川下へ流すのではなく、海へ直接逃がすことが可能であり、ダム本体への負荷軽減や下流域の水害防止に大きく貢献している。

福地ダム上流洪水吐(ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

福地ダム上流洪水吐(ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

福地ダム上流洪水吐 (ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

福地ダム上流洪水吐 曇り時

福地ダム上流洪水吐 (ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

福地ダム上流洪水吐 駐車場

上流洪水吐はサイフォン式洪水吐という方式を採用している。これは、一定の水位に達するとサイフォン作用が働き、吸い上げるように大量の水を一気に流す構造である。サーチャージ水位に達するまでは通常の越流式と同じように堰の上を水が流れるが、水位が限界に達するとサイフォンが作動し、最大で毎秒900トンもの放流が可能になる。この急激な放流能力の増加が、洪水時の安全確保に大きな役割を果たしている。

サイフォン部は幅7m、高さ5m、長さ30mの巨大な構造が6門並列に配置されており、日本最大級の規模を誇る。サイフォンを通過した水は、まず150mの緩やかな水路を流れ、その後48mの急傾斜水路を通って太平洋へと放流される。ダム湖から海へ一直線に水を逃がすこの構造は、沖縄の地形を最大限に活かした合理的な設計といえる。

福地ダム上流洪水吐 (ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

福地ダム上流洪水吐(ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

現地では、県道70号線にかかる大泊橋付近から上流洪水吐の一部を観察できる。橋の上からはサイフォン部の開口部が見え、橋の下には緩やかな放水路が広がる。海側には急傾斜の水路が太平洋へ向かって伸びており、周囲には構造図や断面図を示した案内板も設置されている。ただし、地形の関係で全体像を一望することは難しく、空撮や図面でようやく全貌が理解できるほど複雑な配置となっている。

福地ダム上流洪水吐は、沖縄の厳しい気象条件や急峻な地形に対応するために生まれた独自の構造であり、洪水調節の安全性を大きく高める重要な役割を担っている。ダム本体から離れた場所に設けられた洪水吐という点でも、国内でも類を見ない存在であり、技術的にも地形的にも非常に興味深い設備である。

福地ダム上流洪水吐 (ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)

福地ダム上流洪水吐 海側

福地ダムへ続く上流洪水吐の景観

福地ダムは、沖縄県東村にあるダムで、主に治水(洪水を防ぐこと)と水の供給を目的としてつくられています。
周囲は自然が豊かで、ダム湖の景色もきれいなため、観光やドライブの立ち寄りスポットとしても知られています。

案内板

北部ダム統合管理事務所管理ダム位置図
沖縄本島北部にある北部ダム統合管理事務所が管轄する9つのダムの位置と、それらを巡るスタンプラリーの内容を紹介している案内板です。
ダムの場所をわかりやすく示し、訪れる人がスタンプを集めながら楽しめるように説明されています。

福地ダム上流洪水吐 (ふくじだむじょうりゅうこうずいばき) 案内板

福地ダム上流洪水吐 案内板

ダム名 福地ダム上流洪水吐
(ふくじだむじょうりゅうこうずいばき)
所在地 〒905-1202 沖縄県国頭郡東村宮城
河川名 福地川、福上湖(ふくがみこ)
型式 サイフォン式洪水吐
サイフォン幅 7.0 m
サイフォン高さ 5.0 m
サイフォン長さ 30 m
サイフォン門数 6門(並列)
放水路(緩傾斜) 150 m
放水路(急傾斜) 48 m
管理者 内閣府沖縄総合事務局


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